夏が始まろうとするなか今でもバルの塔には、警備員が入口や内部に待機している中だった。
『あついなぁ〜。』
『まったくだ。』
汗をかきながらも姿勢を正して立っている。
トッ、トッ、トッ、ト・・・・・。
そこに、たった一人の黒装束を着た男が訪れて来た。
『そこの者! 何の用だ?』
突然の怪しい人物がやって来たのか、入口の警備員は睨み付けた顔で尋ねた。
しかし、黒装束の男は淡々と次の言葉を口にした
『少しおいたが過ぎたようだからね、軽くこの国をぶち壊しに来ただけさ。』
警備員はすぐさま武器を構えるが、黒装束の男は既に呪文を唱え、とてつもない強風で警備員を巻き込み、城の方に飛ばして行った。
その最中に黒装束の男は、
『王様に伝えてくれよ、お前らにバルの復讐をするってな!』
そう言って黒装束の男は中へと入って行った。
―城内―
『・・そうか、あの塔に侵入者か。 言動からして恐らくは、頂上にある、宝玉で何かをするということか。』
『それと、塔に増援を送りましたが、不審者はどうやら魔物を大量召喚したようで、一向に兵隊が進みません。』
『それはまずいな、さて、どうしたものか・・・』
王様は悩んでいましたが、決断しました。
『しかたない、冒険者にも協力をしてもらおう』
場に居た者達は皆納得しました。
―城下町の中―
ざわざわ・・・・・・。
町の中は大騒ぎでした。
『バルの塔に不審者が侵入し、乗っ取られたあげく、魔物を召喚して、手に負えない状況にある。 見事、その不審者を捕えるか首をとってきた者には、褒美は100万FRAN(お金の単位)を授ける。』
と看板に貼紙が大きく貼られていました。
『100万だってよ!』
『それぐらいありゃあ、一生遊んで暮らせるぜ!』
人々が騒ぐ中、一人の少年が立っていた。
―数時間前―
王国の道中にて、一人の少年と複数の盗賊がいた。
『少年よ、とりあえず有り金と金目の物を分けてくれないか?』
『俺らは今、飯を買うお金が無いんだよ』
『め、め、め・・・・・・』
『恵んでくださいだろ!』
と、盗賊達はあからさまに少年にかつあげをしていた。
『で、俺達は、腹が減ってイライラしてるから、早く渡さないと とりあえずボコッちゃうよって話なのよ。』
しかし、少年は何かを唱えているかのようにただ黙っていました。
『黙ってないでなんとか言ったらどうなんだよ!』
盗賊が少年に手でつかもうとした瞬間!
ブォォォォォッ!!!
少年に手をかけようとした盗賊が火柱に包まれた。
『ぎょえーーーーー!!』
盗賊は真っ黒になって倒れていった。
『安心しろ。 みねうちみたいなものだ。 指名手配のラブマ盗賊団よ! 今日がお前らの最期の日だ!』
少年は、そう言い放った。
『火柱の時点でみねうちのへったくれもあるか!? お前ら、いくぞ!』
盗賊達はすぐに武器を構えた。
『魔法使いは、魔法を唱える前に素早く叩けばただの雑魚だ!』
盗賊達は少年の所へ低く走り、間合いを詰めて行った!
その瞬間! 少年は剣を抜かずに構えた。
『あの構えは! まて、お前ら! あいつに迂闊に近付くな!』
『へえ、そこのあんた、さっきの言葉といい、少し出来るようだね!』
その瞬間! 少年の間合いに近づいた盗賊二人は目に見えないほど速い居合い抜きの一閃で盗賊二人を吹き飛ばした。
残った盗賊は、恐る恐るその少年を見つめながら呟いた。
『あの魔法技術といい、その居合抜きといい、しかも、誰一人死者を出していない・・・! まさか!あんたは!』
少年は頭に被っていたフードを外し、素顔を見せた。
少年は黒い髪の紅い瞳をしていた
『その通り! 僕は、愛と正ー』
『騙し討ちガラスのジリア!』
『違うだろ! つうかてめえらが勝手に勘違いしているだけだろ! あの時の賞金首の山賊だって・・』
ジリアはいかついた顔で言い直した。 ・・・が、気付いた時には既に盗賊達は走って逃げていた。
『いつの間にあんなに離れてんだよ! でも逃がさないよ!』
ジリアは逃げている盗賊達に向かって呪文を唱えた。
『フレイム・リング・ゾーン! ミディアム!』
『へっへっへ・・・。 こんだけ逃げればもう安心・・!? ナ、なんだぁ!?』
その瞬間! 盗賊達の目先に再び火柱が現れ、彼らは周囲を見渡すと火柱に囲まれ、どうすることも出来なくなった。
『クソッ! もう逃げられねぇ!』
こうなれば、盗賊達には成す術もなく、ジリアの手中に納まったも同然である。
『トドメだ! 火柱よ、空間を阻めて、焼き尽くせ! インジエリア(空間の縮小)!』
ジリアが呪文を唱えたのを合図に、火柱の円が盗賊達のいる内側へと迫って行った!
『ひいっ! お助け〜!』
『助けをもらうねぇ、でもお前らと同じ立場の弱者に耳を貸して助けたか? まあ盗賊業やってる時点で同じだがな。』
ジリアは盗賊達をけなし、そしてじわじわとトドメを刺そうとする。
酷いが彼らにとっては因果応報である。
そして、時間が経ち真っ黒焦げになった盗賊達が横たえていた。
『安心しろ、さっきと同じくみねうち見たいなものだ。 第一本気でやったら指名手配の盗賊か区別出来なくて、報酬どころか、指名手配にされるだろ。』
そう言って、ジリアは盗賊達を縛り上げて、城下町の牢獄へ送り届けた。
『ご苦労、4000FRANだ』
『お、俺の、お、お・・・・。』
『お前のスチールアックス二個分だろ!?
安すぎだよ〜。』
盗賊達は悔しそうな顔で牢屋に収容されていった。
その後、ジリアは牢獄を後にして、町の広場を通る中、広場の中央に人だかりが出来ていた。
気になったジリアは人混みを上手く避けながら中の様子をうかがった。
どうやら、看板がぽつんと立っており、その内容で騒ぎが起きているものであった。
『へぇ〜、100万かあ〜。』
ジリアのこの時の目はまるではしゃいでいる子供のようでした。
『100万もありゃあ念願の豪邸が買えるぜ! よお〜し! やってやるか!』
そして、ジリアは自分の夢の為に謎の黒装束がいる頂上を目指して魔物どもが巣くう高き塔、バルの塔への冒険が始まった。