少女の歌
私の名前はジョニー、小さな船を持った船長さ。
これから話す話は私が船で渡った大陸に確かに存在したある小さな村の話だ。
そう、あれは仕事でやってきた時の事・・。その日、王に頼まれた物を国に持っていくために、その頼まれた物がある村へ向かい、馬車に乗り込んだ。
道はのどかな平原で外を覗くと立派な城があった。 城はカント城と言う。 そして馬車の中でふと旅人らしき2人がある噂話を語りだした。
「なあ、この先の村の噂しっているか?」
「え? 何だ? 詳しく教えてくれよ。」
「実はな、その村ではある一定の期間に村の女の子が洞窟に一人で入って行くんだそうだ。」
「なんだそりゃ?」
「でも、その女の子はちゃんと無事に戻ってくるんだってよ。」
「ふ〜ん。 一体なんだろうな。 気味が悪いぞ。」
そんな話を横から聞いているうちに村に着いた。
そして、私は村に着いてすぐに村長に商談を持ちかけた。 商談もあっさり成立。 翌日に荷物の点検と、さらに次の日に集荷を行うからその間は村で暇をつぶすことになった。 その後、宿までの道を歩いていたら目の前に一輪に咲く青い花が咲き乱れていた。
私にはそれが目に付いたんだ。 .村の人に花の事を聞くと”モルオールの花”というこの地に咲く強い毒性を持つ花だそうだ。
初日の夜 月の光が外を照らす頃の時間だった。
タッタッタッタ・・・・・。
不意に外の景色を見たら一人の少女が外を歩いていた。 その少女は 赤毛で 長い髪を 後ろにまっすぐ下ろした 可愛らしい女の子だ。 だが表情は 物哀しそうな顔をして何処かへ向かっていった・・・。
何か気になったが私は次の仕事があるのでサッサと寝る事にした。
次の日の朝、その村の特産物で目的の品の村のチーズを使って作られた少し癖のある匂いの緑の野菜のポタージュが朝食だった。
私はそれをサッサとお腹の中に流し込んで、品物のチェックに向かった。
倉庫には体つきのいい男がいる。 名はマルクスと言う私より年上の男だ。 打ち合わせを軽く済ますとさっそく品物のチェックを行った。
「マルクスさん、ここの品物のチェックはこれでいいでしょう。」
「分かりました、では次の品の場所に向かいましょう。」
そして、肝心の仕事も支障はなく進む所にテクテクと部屋の奥から誰かがやってきた。
「おや、スフじゃないか?」
そこには、昨日の夜見た女の子がいた・・・。 どうやら反応からしてマルクスさんの娘さんのようだ。
・・だが、昨日とは一つ違うところがあった。
「お父さん! はい、お弁当持ってきたよ!」
「ああ、そうか もうそんな時間か・・。ありがとう、スフ。」
と言って、スフという少女はこの場を去った。 ・・・・・・・・・・昨日の長かった髪が突然の短髪になって・・。
そしてその日の夜のことだった。また私が窓の外を眺めていた時
タッタッタッタ・・・・・。
また一人、今度は青い髪の少女が昨日のスフと同じ方向に向かって歩いていた。
さすがに私は気になったので 部屋を出て息をひそめて少女の後ろをついていった。
私は周囲をうかがいながらついていき
そして、村のはずれの洞窟にたどり着いた。
その時昨日の二人の噂を思い出した。 ある一定の期間に村の女の子が洞窟に一人で入って行く。 その事を・・。
暗くて足もとがごつごつして空気が湿った中少女は 一人で奥の方に向かっていった。
そして、少女はある場所にたどり着いた。
・・・なにやら洞窟とは場違いな部屋だ。いろんな備えとお墓のようなものがある。 あの場所は何だろう?
そう思って私はもう少し近づこうとした・・。
チャキ!
私の顔の横から剣が突き出ていた。
「動くな! じっとしていろ!」
うかつだった、私は近くにいた何者かの存在に気付かずに近付きすぎてしまった。 私は振り向くと意外な人物がいた。
「ジョニーさん。一切危害は加えませんので大人しく連行してください。」
驚いたよ。 剣を突き立てた人がマルクスさんだったなんて。
だが何故娘の髪を切ったのだろうか?不可解な事が多すぎる。噂で言っていた事は本当のようだ。だがそれは何をする事と関係があるのだろうか? 私にはそれが知りたかった。
そして、私はマルクスさんの命令に従って何故か縛られることなくついていった。
その奥に村長と村の人々のほとんどがいたのだ。私には訳が分からなかったのだ。
「ジョニーさん、別に危害を加えるわけでも死者が出るような事をするわけでもありません。 これからすることを静かに傍観してください」
村長はそう言って、村の人たち一同は静かに何かが終わるのを待っていた。
「村長さんに伺います。今、何を行っているのでしょうか? そして、それは何のために?」
「それは本当に些細な事です。全ては先代の遺志を継ぐための事です。」
「先代の意思?」
「全ては今から四百年前のこの村の創立が始まりでした。」
この村はあなたもご存じの通り癖の強いチーズを売って村の生計を立てています。 それはその時から行っている伝統です。 ですが、ある日 人食い鬼がこの地に住み着き、村や周辺の人々を食い殺したのです。
村の近くにあるカント城に 兵の要請を頼み、カント城の兵士は来てくれましたが討伐に行ったきり帰ってきませんでした。そして、誰もがこの状況を解決できずに悩み続けていたのです。
ある日、当時の村長の娘が たった一人で人食い鬼の所に向かっていったのです。
村の人々はすぐさま娘の捜索に行きました。誰もが最悪の事態を想定していました。人食い鬼に食われる事を・・・。
・・・そして、人食い鬼の居た所は最悪の事態になっていたと同時に誰もが予想できなかった状態が起きていました。 それは、娘の残骸と人食い鬼の死体がそばにあったのです。
当時の村長は大変嘆き、周囲の人も嬉しさと悲しさで、当惑していました。
後日、人食い鬼と娘の死体を調べたところ体内からモルオールの花の毒が出ました。 娘は自らに毒を盛って人食い鬼に自分を食わせたのです。・・・鬼を殺すためにね。
さぞつらかったでしょうね、一人孤独に誰にも相談できず村のためにたった一人でその場所まで向かったのです。
そして、それ以来、その地で眠る娘の敬意を示して10年に一度、村の少女がこの場所に一人で向かい、・・・・そして、長い髪を切るのです。
「身を投げ出す行為を自慢を捨てる行為に代替させた名残りなので、実際にそんなことしては死んだ娘が悲しみますからね」
「そう言う事だったのですね・・。 そんな事を知らず神聖な事に邪魔してすみませんでした。」
「いえいえ、それにこの行いを理解して頂けただけでも嬉しいです。」
マルクスさんは表情を変えてはいないものの声が嬉しそうだった。
「それに対して、カント城の奴らは気持ち悪いやら観光に悪いイメージがつくからやめろとかでうるさいのですよ。」
「それは非道いですね。勇敢に立ち向かった娘を称えるものなのに。」
タッタッタッタ・・・・・。
奥から村の男が現れた。
「ただいま儀式が終わりました。これでこの年度全員分は終わりました。」
「そうか、それはなによりだ。では今日はもう遅いので村に戻りましょう」
スゥーーー スゥーーー・・・・・・。
洞窟から出ると、何か人のような声が聞こえた・・まるで女の子が感謝して歌を歌っているそんな風に聞こえた。
「これは洞窟から流れる風の逆流により周辺に空く穴から出る際に聞こえるものです。 まるで娘が歌っているように聞こえますね。」
「そうですね・・・。」
翌日にこの村を去り、王国に戻った半年後だった・・・・。
私がいたあの村はカント城によって強制的に撤去させられた。 理由は他の大陸から渡ってくる住民を得るためにレジャーな施設と住宅街を立てるからだという・・・。
所詮、その村には大切なものでも違う"価値感" を持った国や人間からは不必要なものにすぎなかった・・・・・・・ただそれだけのことであった・・。
だから忘れない・・・。そして、国を守るために体を張った少女の物語を・・。
生まれは違ってもその”価値観”に否定することは出来ないのだから。
おしまい
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